遺言について相談する弁護士を選ぶポイント
1 相続手続を意識した遺言を提案できる弁護士であること
遺言では、誰がどの相続財産を取得するかを定めることが多いです。
もっとも、遺言で取得する財産が定められていたとしても、相続後にきちんとスムーズに手続ができなければ、思った通りに遺言内容を実現することができないという事態が生じかねません。
このため、遺言を作成するに当たっては、相続後にきちんとスムーズに手続が可能なものを作成することを意識する必要があります。
意外に思われるかもしれませんが、弁護士によっては、この手続を意識した遺言を作成することができないことがあります。
これは、「弁護士の仕事は、相手方との合意書を作成すること、裁判の決着をつけることまでである。それ以降の手続については、当事者本人や別の専門家が行うべきものであり、弁護士が関知するものではない。」と考える弁護士も存在するためです。
遺言を作成したとしても、相続手続を進めることができず、遺言内容をきちんとスムーズに実現できなければ、絵に描いた餅となってしまいかねません。
遺言について弁護士に相談するのであれば、相続手続を意識した遺言を提案できる弁護士に相談した方が良いでしょう。
2 遺留分を意識した遺言を提案できる弁護士であること
遺言を作成したとしても、財産を受け取ることができなかった相続人や、少額の財産しか受け取ることができなかった相続人から、遺留分侵害額請求がなされることがあります。
このような場合には、遺言で受け取った財産の一部を払い戻し、遺留分に相当する金銭として支払ったり、相続人自身の財産から、遺留分に相当する金銭を支払ったりすべき義務が生じることがあります。
このように、必ずしも、遺言に基づいて相続を行えばすべてが解決するわけではなく、他の相続人から遺留分侵害額請求権がなされるかもしれないということは、常に念頭に置いておく必要があると言えます。
遺言について弁護士に相談するのであれば、他の相続人から遺留分侵害額請求がなされることを想定しつつ、その上でどのように対処すべきかについてまで、適切に助言することができる弁護士に相談するのが良いでしょう。
遺言を作成すべきタイミング
1 できるだけ早い方が良い
遺言を作成するタイミングは、できるだけ早い方が良いです。
というのも、遺言を作成するのが後にずれ込めばずれ込むほど、リスクが生じてくるからです。
遺言の作成が後にずれ込むことのリスクとしては、そもそも遺言を作成する機会が失われてしまうということを挙げることができます。
極端な話をすると、明日、事故に遭ってしまうと、遺言を作成することができなくなってしまう可能性もあります。
また、年月を重ねると、認知症等により判断能力が低下してしまい、遺言を作成することができなくなってしまうおそれも生じてきます。
そして、一旦、遺言を作成することができない事態になってしまうと、過去に遡って遺言を作成することはできませんので、取り返しのつかない事態になってしまいます。
こうした事態を避けるためにも、遺言はできるだけ早く作成した方が良いと言えます。
2 内容が決まっていない場合は、暫定的なものでも良いので作成した方が良い
他方で、遺言については、何を書いたら良いか分からない、重要なことだから、色々考えて作成したいという気持ちが生じることが多いです。
このような気持ちから、遺言の作成が先延ばしになってしまうことも多いのではないでしょうか。
ただ、先に述べたように、遺言を作成できないリスクを考えると、やはり、遺言はできるだけ早く作成した方が良いです。
そこで、お勧めしたいのは、暫定的なもの、後で変更する可能性があるものと考えて、遺言を作成することです。
遺言については、何度でも、自由に作成し直すことができます。
このため、暫定的なもの、後で変更する可能性があるものと捉えて、遺言を作成することも十分にできます。
後で色々と考えた結果、暫定的に作った遺言が妥当ではないと考えるに至ったのでしたら、遺言を作成し直せば良いのです。
このように考えれば、タイミングを逸することなく、なんらかの遺言を作成できるのではないでしょうか。