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生前贈与が相続税対策として利用できる場面

  • 文責:所長 税理士 寺井渉
  • 最終更新日:2023年8月16日

1 生前贈与は本当に相続税対策として有効か?

相続税対策として、生前贈与を活用するのが有効であるという話がなされることがあります。

ところが、実際には、相続開始前の一定期間内においては贈与財産の加算の制度があるため、生前贈与を行ったものの、結局、相続税対策としては何の意味もなさなかったという事態が発生する可能性があります。

相続税対策として生前贈与を活用する際には、この贈与加算の存在を踏まえて、適切な対策を行う必要があります。

2 贈与財産の加算とは?

前提として、贈与財産の加算について説明を行いたいと思います。

相続などにより財産を取得した人が、被相続人から相続開始前3年以内(令和6年1月1日以降の贈与から、3年の期間を段階的に7年に延長)に贈与を受けた財産は、相続税の課税対象になります。

この期間内になされた贈与であれば、上記に該当するものは、すべて相続税の課税対象になります。

その贈与がいずれも贈与税の基礎控除額、つまり、110万円以下であったとしても、相続税の課税対象になります。

3 相続人に対して贈与を行った場合

相続人については、何らかの相続財産を取得することが多いでしょう。

このような相続人に対して、相続開始前3年以内(令和6年1月1日以降の贈与から、3年の期間を段階的に7年に延長)に贈与を行ったとしても、結局、贈与された財産に相続税が課税されることとなります。

他方、贈与を行ったのが加算の対象となる期間より前であれば、贈与された財産には相続税は課税されないこととなります。

以上から、相続人については、基本的には、贈与加算の対象となる期間より前であれば、贈与を行うことで、効果的に相続税の課税対象になる財産を減らすことができる可能性があります。

つまり、相続人に対しては、早期に贈与を行うのが、相続税対策としては効果的になりやすいです。

4 相続人以外の人に対して贈与を行った場合

相続人以外の人については、遺言で受遺者に指定されたり、死亡保険金の受取人に指定されたり、死亡退職金の受取人になったりしない限り、相続などによって財産を取得することはありません。

そして、相続などによって財産を取得しない人に対する贈与は、贈与がなされたのがどのタイミングであったとしとも、相続税の課税対象にはならないこととなります。

したがって、相続が間近に発生することが予想される状況であったとしても、相続などによって財産を取得しない人に対して贈与を行えば、効果的に相続税の課税対象になる財産を減少させることができます。

他方、相続人以外の人であったとしても、相続などによって財産を取得する人に対して、相続開始前3年以内(令和6年1月1日以降の贈与から、3年の期間を段階的に7年に延長)に贈与を行ってしまうと、贈与された財産は相続税の課税対象になってしまいます。

遺言によって受遺者に指定された場合だけでなく、死亡保険金の受取人に指定されていたり、死亡退職金の受給権者になっていたりした場合にも、この贈与加算の対象になってしまいます。

したがって、このような人に対して、相続が間近に発生することが予想される状況で贈与を行ったとしても、相続税の課税対象になる財産が減ったことにはならない可能性がありますので、注意が必要です。

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